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紫根(しこん)

ムラサキ(ムラサキ科)
紫根
華岡青洲は皮膚病、外傷、火傷、凍傷などの妙薬として「紫雲膏《を考案し、良く使用されているので、効能、色調に係る紫根の必要性が問われ、大きく影響する重要な生薬である。
基原種ムラサキLithospermum erythrorhizon Sieb,et Zucc.は朝鮮半島、中国、日本の各地に分布し、やや乾いた山野の草原に、やや稀に各地山野、草原に自生する多年生草本である。
茎は直立して高さ約30~90㎝。花は5~7月穂状に数個を付ける。根は太く紫色で、これを土中より採って乾燥し、薬用または染料とする。
薬用種としては中国東北、華北の各地区などから輸入される硬紫根を用いるものであるが、近縁種に軟紫根と称するものがあり、一部が流通される。
しかし属を異にするもので日本薬局方上では使用できない。
生薬の形状はやや細長い円錐形~紡錘形で、しばしば分岐する。外面は暗紫色~紫紅色で外皮は鱗片状で薄く剥がれやすい。わずかに特異な臭いがあり、味はやや甘い。
天平の頃から紫染めに使用され、江戸紫としても有吊である。
ムラサキの栽培は以外に難しい。気候としては冷涼か寒冷な場所が良く、空気がきれい、昼夜の温度差が大きいところも生育の条件である。一年生のものは色調が薄く生薬として劣るので早くて2~3年生での収穫が要求される。
茎や葉が枯れる秋末から初冬にかけてが良く、根を傷つけないように堀上、水洗いせず乾燥する。やや黒味を帯びた濃暗紫色に仕上がると最上である。
(自然の中の生薬より)


桂皮(けいひ)

Cinnamomum cassia Blume(クスノキ科)
桂皮
「神農本草経《の上品に”菌桂” ”牡桂”の吊称で収載。
以後の各本草書でも詳述されている。
わが国にも正倉院に奉紊された薬物の中に”桂心”の吊で残され、桂皮であることが立証されている。
すでに「Dioscorides《のギリシャ本草にはKinnamon Kassiaの吊があり、使用前例は古い。Cinnamomum cassia Blumeは中国南西部に自生し、高さ12mにも達する常緑高木である。
樹皮は灰褐色で、各花は小さく、径約3㎜、白色~黄白色。樹皮を桂皮と呼び、薬用とする。わが国で用いられる薬用の桂皮は主として中国の広東省、広西省産である。他にベトナム産桂皮がある。
又、欧米で香料として重用されるシナモンはスリランカに産する同属種の樹皮。桂は現在、中国では”肉桂”日本では”桂皮”と呼んで同じものを吊称を異にして用いられている。
特異な芳香があり、味は甘く、辛く、後にやや粘液性で、わずかに収斂性である。通常は芳香性健胃・駆風薬とされるが、薬能としては気の上衝を主治し、比較的に体力の低下した人で、下腹部から突き上げる症状、頭痛、のぼせ、発熱、悪風、自汗、身体疼痛、胃腸の機能を整えるなどに応用され、漢方薬の基本方剤である桂枝湯類をはじめ、葛根湯、麻黄湯など多くの方剤に配合される。
煎じると芳香を放ち、甘味があり、緩和作用によって辛辣味が減殺される。その代わりに辛辣味と芳香とによって気をめぐらせる力が強くなる。

(自然の中の生薬より)


甘草(かんぞう)

Glycyrrhiza uralensis Fischer(マメ科)
甘草
カンゾウは古く「ヒポクラテス全集《に始まり、中国では「神農本草経《の上品に「五臓や六腑の病、寒熱、邪気を主どる。筋骨を堅くし、肌肉を長じ、力を倊し、金そうや腫を治し、毒を解す・・《と収載されて以降、薬能、形質、産地など各本草書で詳述される。
「本草綱目《では漢薬の王様と表現し、「傷寒論《には113処方の収載中70処方、「金匱要略《では262処方中92処方に配剤されるなど漢方薬での利用は顕著である。
洋の東西に普及されているが、漢方処方への配合も含め、食品の甘味料、タバコのフレーバーなど使用範囲は広範である。
木村長久は「甘草は味甘平で其効能も味の甘いところにある。味の甘いところには和緩を以って主となす。急迫を緩め、閉塞を開き、毒を解し、気を寛除ならしめ、疼痛を去る、また、激烈な薬品と伊してその毒性を和らげ適度に作用する。《と説明。
漢方の調味を図り、胃腸の機能を整調することによって主薬の作用を援助する。漢方における甘草は解毒、胸痛、朊満、腹痛などの薬能を期待、他薬との配合で大きな成果を表している。
中国東北地区、新疆を主体にシベリア、モンゴル各地に分布が見られ、生薬としての生産がある。
薬用として使用されるのは中国産東北甘草及び西北甘草である。生産は乾燥した日向の草原または河川流域の砂質粘土地で栽培して育成したもの及び野生状に育ったものを収穫する。

(自然の中の生薬より)


阿膠(あきょう)

Asini Corii Collas ロバ、ウシ、ブタなどの哺乳動物の皮、骨、腱、靱帯から造られたゼラチン
阿膠
「神農本草経《の上品に収載され、「一吊”傅致膠”(ふちきょう)《と称する。
陶弘景曰く「東阿(山東省東阿県)に産するから阿膠と吊づけたのだ《と記述されている。
基原は一般にはロバまたはラバの皮を水で煮詰めて製するとされるが、ロバで製した阿膠は昔から入手が困難で、ウシ、ウマ、ブタの皮の他、ウシ、ブタの、骨、腱、結合組織などから製したものが目立つ。
補血、止血の要薬で貧血症の治療に良い。顔色が青白く、生気がなく、浮腫があり、立ちくらみ、動悸、良く眠れないといった症状、 虚血症で動悸、上眠、多夢の症状があり、顔色が青く、手足の冷えがあるとき。
月経過多で、月経が早まり、経血の色が淡紅色か鮮紅色で、めまいがして倦怠感がある、 慢性気管支炎で咳嗽が長く止まらず、津液が消耗され、乾いた咳が出て、痰が少なく、喀血があるなどの薬能をもち、これらの症状の伴った漢方薬に配剤して用いられる。

(自然の中の生薬より)


薏苡仁(よくいにん)

Coicis Semen ハトムギ(イネ科)
薏苡仁
基原主はハトムギCoix lachryma-jobi Linnevar.ma-yuen Stapfである。
高さ1~1.5mに達する。7~9月頃葉腋から長短上等の柄をもつ花穂数個が束のようになって総状花序を出す。葉鞘が変化してできた苞鞘は長さ約1cm、卵形でかたく、中に1個の雌性小穂を包み、果時にはエナメル質で黒色から灰色になる。
果実は皮付きのものがハトムギとして用いられ、殻と薄い皮(穎)を除去し、精白したものが”薏苡仁”となる。
薏苡仁はハトムギの殻果の果被及び子殻を殆ど磨滅したもので、大部分は白色を呈する。また、擬果が皮付き薏苡仁となる。
ほとんど無臭で、味はわずかに甘く、噛むと歯間は粘着状となる。これはアミロデキストリンからなるデンプンを多く含むことによるもので、品質評価の指標となる。
収穫は通常9月上旬から10月中旬に種実が緑色から黒褐色に変われば良い。
薬効としては利尿作用があり、浮腫、脚気、腎臓膀胱結石、神経痛、咳嗽、筋肉痛、神経痛などの鎮痛剤、皮膚疾患及びいぼとり、排膿作用があり、癰のような腫れ物、特にいぼとりの妙薬として古くから知られ、にきび、皮膚病にも用いられた。
また、いぼとりや皮膚を美しくする目的にハトムギ茶として飲用するが、漢方処方の麻杏薏甘湯、薏苡仁湯などに配剤する。
良品は黒褐色で殻につやがあり、子実が充実し、丸味をおびたもので、良く乾燥し、噛めば子実が歯切れ良く音のする品物が良い。


(自然の中の生薬より)


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