不妊症とは・・・
妊娠を望み、2年以上夫婦生活を営んでも妊娠に恵まれない場合を不妊症とよびます。一度も妊娠したことのない場合を原発性不妊、妊娠の既往があるもののその後、妊娠しない場合を続発性不妊とよびます。
不妊の原因には様々なもの(内分泌・排卵因子、卵管因子、子宮因子など)がありますが、女性側のみならず男性側に原因がある場合も30~40%あると言われています。
なぜ不妊症になるのか?
なぜ不妊になるのかを考えるには、どうのように妊娠するのかを知っておく必要があります。
妊娠が成立するには、いくつかのステップがあり、全てが正常に働いて妊娠へと至ります。
女性の体内ではホルモンの調節により、複雑な現象がタイミングよく起こり、「排卵→受精→着床」へと進みます。
月経の始まる頃は直径5mmほどの卵胞が、下垂体から分泌される卵胞刺激ホルモンの作用で徐々に大きくなります。
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卵胞が成熟すると下垂体から黄体化ホルモンが大量に放出され、これが排卵を引き起こします。
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卵胞から放出された卵は卵管の中で取り込まれ精子と出会います。
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精子は卵の中に進入し融合します。(これを受精といいます。)
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排卵後に残された卵胞の細胞は黄体細胞へ変化し、卵胞ホルモンとともに多量の黄体ホルモンが分泌され、これが子宮内膜を変化させ受精卵が着床しやすいように準備をします。
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受精後の卵は胚とよばれ、細胞分裂を繰り返しながら卵管内を子宮方向に運ばれ、約1週間を経て着床します。
以上で初めて妊娠が成立します。
これらの過程のどこかが障害されると妊娠が難しくなります。
例えば、精子が子宮の中へ進入しない、成熟した卵胞の破裂が起こらない、卵が卵管の中へ取り込まれない、着床しても妊娠が維持できない、など様々な原因が不妊の理由として考えられます。
不妊症の血液検査
下垂体ホルモンである、卵胞刺激ホルモン(FSH)や黄体形成ホルモン(LH)、プロラクチン(PRL)や性腺ホルモンである卵胞ホルモン(E2)、黄体ホルモン(P4)などの様々なホルモンの値を血液検査により調べます。
☆下垂体ホルモン
FSH(卵胞刺激ホルモン) | |
作用 | 卵巣で卵胞発育を促進します。 |
※通常10以下ですが、15~20を越えると卵巣機能が低下している可能性があります。 |
LH(黄体形成ホルモン) | |
作用 | 卵巣で卵胞成熟と排卵を促し排卵後の黄体を刺激します。 |
※通常10以下ですが、10を越えると排卵障害の可能性があります。 |
LH/FSH比 |
通常1以下(すなわちLH<FSH)ですが、1以上(すなわちLH≧FSH)の場合には排卵障害の可能性があります。 |
PRL(プロラクチン) | |
作用 | 乳腺の発達と乳汁分泌に関与します。 |
ストレスがあると高いと言われ、高プロラクチン血症は排卵障害や流産の原因となることがあります。 |
☆性腺ホルモン
E2(卵胞ホルモン) | |
作用 | 生殖器の発育・卵胞成熟の指標・子宮内膜の肥厚 |
P4(黄体ホルモン) | |
作用 | 黄体から分泌され子宮に作用し着床に備える・妊娠の維持に必要 |
月経周期によって変動します。排卵後に上昇し、およそ10ng/ml以上が正常値です。これを下回る場合は「黄体機能不全」が疑われます。 |
漢方薬による治療
漢方の不妊治療は、五臓や気・血・水のバランスの乱れを整えることにより、妊娠しやすい体内環境をつくることです。
例えば、五臓の「腎」(じん)
西洋医学の腎臓の意味だけではなく、漢方的には、生殖機能、免疫機能、成長・発育、老化など様々な部分に関係しています。
「腎は生殖を主り、生命の源であり、水火の家(腎陰を命門の水、腎陽を命門の火といい古来、腎を水火の家といいます)であり臓腑陰陽の本(根本)で、精は腎を源とする」といわれています。
従って、腎中の精気が不足し腎陽が虚す(弱まる)と必然的に生殖機能が低下して月経不順や不妊症となるのです。
特に腎陽は元陽といわれ人体の陽気の根源ですので腎陽が弱まることによって黄体機能が低下して妊娠維持が難しくなったり不妊となったりします。
この弱った腎陽を補い腎陽虚型を根本から改善して治すのが補腎剤となります。
また、血液の流れが滞り起きる状態を瘀血(おけつ)といいます。
子宮の血流が悪化して子宮に瘀血が生じると月経は不順となり、生理時に暗赤色の血塊が混じることがあります。また瘀血は疼痛を引き起こすことがあるため、生理時に激しい生理痛や腹痛などを伴います。
瘀血が重くなると患部は徐々に血塊が形成されてきますので、瘀血が生じた子宮は子宮筋腫などが発生しやすくなります。
この血行不良を改善し、瘀血によって引き起こされた不調を治療するのが活血化瘀剤となります。
このように漢方は、その方の体質や症状により様々な漢方薬を使い分けます。ぜひ一度ご来店になりご相談ください。